日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区)は、日本初、基礎インスリンと補正インスリン両方の自動インスリン注入(AID)機能を持つ「アドバンス ハイブリッドクローズドループ(Advanced Hybrid Closed Loop:以下、AHCL)」テクノロジーを搭載したインスリンポンプ「ミニメド™️780Gシステム」の製造販売承認を2023年2月24日に取得し、11月27日より販売を開始し、血糖自己測定の回数をこれまでより減らして使用できるリアルタイムCGM(持続グルコースモニタ)「ガーディアン™️4スマートCGMシステム」も近日販売を開始することを発表しました。
糖尿病患者をめぐる背景や課題
国内の1型糖尿病患者数は約9万2千人であるとの報告があり、特に1型糖尿病の場合は若年発症の割合が高く罹病期間が長い傾向があるため、生涯を通じて最適な治療法を選択しながら血糖を管理することが重要です。しかし、日々の体調や運動量、心理状況、多様な食事パターンなど、様々な血糖変動の要因を考慮しながら、常に最適なインスリン量を考えて投与することは、患者にとって非常に大きな毎日の負担です。その結果、やむを得ずインスリン治療に合わせて食事や運動のタイミングや量を調整せざるを得ない場面もあり、これらの制約が生活の自由度を妨げることから、身体的・心理的な負担と感じる方も少なくないと言われています。
ミニメド™️780Gシステムについて
今回発売したミニメド™️780Gシステムに搭載されたAHCLは、従来モデル(ミニメド™️770Gシステム)に搭載されていたHCL(ハイブリッドクローズドループ)の基礎インスリン自動調整機能に加え、新たに補正インスリンの自動投与機能が付加されます。様々な要因により、血糖が上昇したときに必要となる補正インスリンを、連動するCGMの値に応じてインスリンポンプが自動で計算し、注入します。これにより、HCLだけでは十分に抑制できていなかった高血糖の予防・抑制が期待されます。また、ミニメド™️780Gは、ガーディアン4トランスミッタ、ガーディアン4センサと組み合わせて使用しますが、1日に3~4回行ってきた定期的な較正を行う必要がなく、血糖測定に伴う穿刺の頻度を減らすことができます。患者は高血糖に対し3回に1回は補正せず、2回に1回は補正インスリンの計算間違いが起こっているという海外の報告もあります。新たに補正インスリンを自動投与する機能が追加されたことにより、インスリンポンプでの自動調整がされ、より患者にとって負担なく、高血糖イベントに対応することが可能となります。
また、従来のスマートフォンアプリとの連動に加え、Apple Watchにも対応します。CGMの値やアラートの発生を手元で確認でき、仕事中や運動中も、より簡単にご自身の状況を把握できます。インスリンの注入履歴やアラート・CGMデータはリアルタイムでクラウドに保存され、患者がいつでもアプリやApple Watchで振り返ることができ、血糖マネジメントに役立ちます。こうしたデータはクラウドを通じて医療従事者にも随時共有されるため、いざという時にスムーズに対応できるだけでなく、通院時の診察の効率化も期待されます。
さらに新しい取り組みとして、現在ミニメド™️770Gシステム(HCL)を使用中の患者はインスリンポンプ本体を交換することなく、専用のアプリを介して780Gにアップデートし、使用できるようになりました。これは医療機関・患者双方の負担軽減や、機器本体交換不要による環境負荷の軽減など、多面的な効果が期待されます。インスリンポンプの本体を交換せずに内部のプログラムをリモートでアップデートするこの方法は、これまでにない新しい取り組みです。
ガーディアン™️4スマートCGMシステムについて
糖尿病患者自身による血糖自己測定回数の減少が期待されるリアルタイムCGM(持続グルコースモニタ)システムです。従来のガーディアン™️コネクトと異なり、CGMの較正が不要となるため、較正のための血糖自己測定回数やアラート回数の減少による負担の軽減が期待されます。
リアルタイムCGMが測定しているのは、血糖値より遅れて変動する間質液中のグルコース濃度(センサグルコース値)であるため、この間質液で測定したセンサグルコース値を血糖値に近づけるため、これまでは定期的に実測血糖値を入力(CGMを較正)する必要がありました。
ガーディアン™️4スマートCGMは、インスリンポンプを使用しない患者に対しても安心した生活の実現を支援します。
最大60分前から高・低血糖傾向を予測しお知らせするアラート機能や、遠隔での医療者・家族の見守り機能と組み合わせることで、より便利で安心した生活の実現をサポートします。リアルタイムCGMデータを家族や友人、医師と共有した結果、89%の患者が安心感が向上したと回答する報告もあり、予測アラートと見守り機能の併用は患者さんのQOL向上に寄与することが期待されます。