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アジアドライアイ診断基準に則った、世界初のドライアイAI診断モデルの開発

OUI Inc.(ウイインク:株式会社OUI)の研究グループは、アジアのドライアイ診断基準に最も重要な涙液層破壊時間(TFBUT; tear breakup time)を自動で推定するアルゴリズムを用い、 世界初のドライアイ人工知能(AI; artificial intelligence)診断モデルを開発しました。

研究の背景

ドライアイは、眼科を受診する原因の上位を占めています。特に、日本では6人に1人の割合でドライアイが発症すると報告され、世界では国や地域によって8.7~33.7%の有病率と報告されています。眼科領域においては、特に網膜疾患や視神経疾患(眼底疾患)のスクリーニングや診断において、人工知能(AI; artificial intelligence) の活用に注目が集まっております。 これら眼底疾患に関連するAI開発は世界中で盛んに行われています。しかし、ドライアイを始めとした、前眼部疾患におけるAI開発は進んでいません。これは、診断やAI開発のための機械学習に必要な、画一的で、大量の細隙灯顕微鏡の画像データを取得することが困難である事が原因の1つとされています。この問題に対し、研究グループは スマートフォンアタッチメント型細隙灯顕微鏡であるSmart Eye Camera (SEC; 医療機器届出番号: 13B2X10198030101、13B2X10198030201、13B2X10198030301)を開発し、医療機器として実用化しました。本研究では、SECを用い、大量の細隙灯顕微鏡の画像データを取得することで、アジアにおけるドライアイの診断基準で最も重要な臨床パラメータの涙液層破壊時間(TFBUT; tear breakup time)の推定を行い、ドライアイ診断AIの開発を目指しました。

研究内容

本研究は、SECを用いて収集された、後向きの79症例158眼分の前眼部動画すべてを静止画に分割することで、 合計22,172枚の画像に分割しました。 次に、診断に不適切な5,732枚の画像を除外し、残りの16,440枚に対し、眼科専門医がTFBUTに関わる層破壊(break up)の所見をアノテーション(タグ付け)し、 12,011枚の学習用データセット、1,599枚の評価様データセットに分類し、すべての学習用データセットを機械学習にかけました。学習用データセットを使用して開発したドライアイAI診断モデルは、 眼科専門医のドライアイ診断に対して、感度:0.778 (95%信頼区間 0.572-0.912)、 特異度:0.857 (95%信頼区間 0.564-0.866)、機械学習の評価指標であるAUC (Area Under the Receiver Operating Characteristic Curve):0.813 (95%信頼区間 0.585-1.000) を達成しました。また、Gradient-weighted class activation mapping (GradCAM)を用いた、ヒートマップによる可視化技術でも、AIは正確にTFBUTの 所見を捉えていることがわかりました。この結果により、本アルゴリズムは特筆すべき高い診断感度や特異度は達成できませんでしたが、 従来であれば万を超える多数の症例を収集しないと開発不可能であった、画像診断アルゴリズムをわずか79症例で、達成したことに大きな意義があります。 今後は、収集する症例数を増やし、本アルゴリズムを最適化することで、より精度の高いドライアイAI診断モデルを開発し、プログラム医療機器(SaMD;Software as a Medical Device)としての実用化を進めるとしています。

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