大腸内視鏡検査時の病変見逃しを改善
国立研究開発法人国立がん研究センター(以下、国立がん研究センター)と日本電気株式会社(NEC)は、両社が共同で開発した、AIを用いた早期大腸がんおよび前がん病変を内視鏡検査時にリアルタイムに発見するソフトウェア「WISE VISION 内視鏡画像解析AI」を開発し、2020年11月30日に日本で医療機器として承認されたことを発表しました。
また、欧州においても同年12月24日に医療機器製品の基準となるCEマークの要件に適合しました。
「WISE VISION」では、1万病変以上の早期大腸がんおよび前がん病変の内視鏡画像25万枚の画像1枚1枚に国立がん研究センター中央病院の内視鏡科スタッフが所見を付けた上でAIに学習させました。
このAIを用いることで大腸内視鏡検査時に映し出される画像全体をリアルタイムに解析し、大腸前がん病変および早期大腸がんを検出した場合は、通知音と円マークでその部位を示し、内視鏡医へ伝えます。内視鏡医はAIが示した場所をさらに注意深く観察することで、意識していなかった場所を意識できるようになり、大腸がんの見逃しを回避できる可能性があります。
また、このソフトウェアでは、特に発見の難しい表面型・陥凹型腫瘍についての症例を重点的に深層学習しているのも大きな特徴です。内視鏡医とAIが一体となって検査を行うことで、診断精度の改善・向上が期待されます。
大腸がんの予防と早期発見に寄与
大腸がんは、日本において頻度の高い疾患であり、罹患者数も死亡数も増加しています。人間ドックや大腸がん検診で前がん病変である腫瘍性ポリープが発見された場合は、積極的に内視鏡的切除が行われています。
したがって、こうした前がん病変あるいは早期がんを内視鏡検査時に見逃さないことが重要ですが、肉眼での認識が困難な病変や解剖学的死角、医師の技術格差等により24%が見逃されているという報告もあります。また、別の報告では、大腸内視鏡検査を受けていたにもかかわらず、後に大腸がんに至るケースが約6%あり、その原因は、58%が内視鏡検査時の見逃しによるものとされています。
大腸内視鏡検査時の病変見逃しを改善し、前がん病変発見率を向上させることが、大腸がんの予防、早期発見に大きく寄与します。
将来的には、画像強調内視鏡などの新しい内視鏡を利用し、大腸前がん病変と早期大腸がんの表面の微細構造や模様を学習させ、大腸病変の質的診断や大腸がんのリンパ節転移予測への対応も目指します。
さらに、CT画像、病理画像や分子生物学的情報などの情報とリンクさせ、より利用価値の高いマルチモーダルなリアルタイム内視鏡画像診断補助システムを目指し、高度医療や個別化医療、遠隔診断の実現に向けて開発研究を進めていきます。
(画像はプレスリリースより)
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国立研究開発法人国立がん研究センター
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